漢方薬はゆっくり効く?

 漢方薬は一概に「ゆっくりとしか効かない」とか「長く飲まねば効かない」と思っている人が多いようです。しかし、慢性化した治りにくい病気に対しても、意外なほど早く効果があらわれるケースが少なくありません。ではなぜ、漢方薬は長く飲まねば効かないと誤解されるのでしょうか。その理由を私なりに考えてみました。

治りにくい病気の人が飲む

 今では多くの病気が西洋医学で治ります。治りにくい病気の人達が西洋医学と長く付き合う結果になっています。漢方でも同様で、漢方が医療を担っていた時代では、漢方薬を長く飲む人は少なかったはずです。多くの人が短期間で治っていたのです。今の時代に漢方に頼ろうとする人の多くが、進歩した西洋医学でも治りにくい病気で悩んでいます。それも長く患って治りにくくなった後で、漢方を頼る傾向があります。そのような状態は、漢方で速効が得られるケースばかりではありません。

薬草を漢方薬と間違える

 漢方は、明治末期から昭和30年代頃までの間、ごく一部の人に受け継がれた以外は、世間でほとんど利用されませんでした。しかしその間、漢方薬の原料となる生薬(しょうやく)を含めて、多くの薬草が西洋医学や民間療法の分野で使われていました。そのうちに、薬草そのものが漢方薬と勘違いされるようになったのです。単なる薬草に漢方薬ほどの効果がないのは当然です。

漢方に対する思い込み

 西洋医学の治療に長い年月がかかっても、「西洋医学だからゆっくり効く」と思う人はいないでしょう。治りにくい病気にかかっていると思うのが普通です。ところが、漢方で治そうとしたときには、多少の期間が過ぎると「漢方では長くかかる」とすぐに考えがちです。西洋医学より早く効いても、漢方はゆっくりとしか効かないと言われるのはつらいものです。

一時抑えとは違う

 西洋医学の「一時抑え」を「治ること」と勘違いしている人が多いようです。例えば、注射か頓服で痛みが和らぐと「治った」と言う人がいます。確かに鎮痛剤の効果はすばらしいものですが、痛みの症状を一時的に抑えるだけで、病気そのものを治すわけではありません。病気の根本的な治療を目的とする漢方の効果は、決して遅くはありません。病気によって、西洋医学より早く治るものがあるからこそ、漢方の存在価値があるのです。

使い方が不適切

 漢方薬の使い方は、思いのほか複雑で一筋縄ではいかず、熟練している人は多くはいません。ところが現在の漢方薬の消費量は膨大です。これは、適切な使い方ができていないケースが多いということでしょう。適切に使ってこそ、初めて漢方薬の効果を正当に評価することができるのです。

得意分野でない病気の人が飲む

 漢方にも西洋医学にも、得意分野と不得意分野があります。漢方の不得意分野の病気に対しても、漢方での治療にこだわる人がいるのには困ります。