赤ちゃんに漢方薬を飲ませていい?

 先日、私の友人が出産しました。その際、生まれたばかりの赤ちゃんに漢方薬を飲ませたというのですが、赤ちゃんに飲ませてよいのでしょうか。また、妊娠中や産後にお薦めの漢方薬はありますか。
(27歳・女性)
 昔の日本人は、漢方を病気の治療や体調不良の改善という目的で使っていただけでなく、人生の折にふれて上手に利用してきました。生まれたばかりの赤ちゃんに飲ませたり、妊娠中や産後に飲んだりすることも珍しくなかったのです。今回は妊娠中の人に関係のある漢方を紹介しましょう。

当帰散(とうきさん) 江戸時代の名医、有持桂里先生の書物「方輿輗」(ほうよげい)の婦人の項目で紹介されているのが、妊娠中の養生薬ともいえる当帰散です。当帰散は、当帰、黄芩(おうごん)、芍薬(しゃくやく)、川芎(せんきゅう)、白朮(びゃくじゅつ)という5種類を組み合わせたもの。「妊娠中に常服すれば安産になり、胎児の病気がない。ただし、5日や6日飲んでも効くものではないので続けて飲まなければならない」と書かれています。現在、手軽に飲める製剤がなく、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)を代用することが一般的です。

まくり 江戸時代、生まれてすぐの赤ちゃんに対して母親の初乳の前にまくりという漢方薬を飲ませる習慣がありました。まくりというのは、赤ちゃんの胎毒を残らず〝まくり出す〟という意味。有持先生は「胎毒とは分娩時に赤ちゃんが飲み込む胎内の瘀血(おけつ)や悪汁のことで、胎毒が残ると、よくかんしゃくを起こしたり、病気になりやすくなるなど不都合なことが多くなる」と説いています。胎毒の害がどれほどのものか証明はできませんが、当時の人々が、赤ちゃんの健やかな成長を願って、まくりを飲ませていたことは確かです。まくりには、いくつかの処方がありますが、明治時代最後の漢方の名医といわれた浅田宗伯先生の書物には、大黄(だいおう)、黄連(おうれん)、紅花(こうか)、甘草(かんぞう)を組み合わせた甘連湯(かんれんとう)が最も良いと書かれています。

芎帰調血飲(きゅうきちょうけついん)出産後、体を休めて英気を養うことが大切なのはいうまでもありません。香月牛山先生の書物「牛山活套」(ぎゅうざんかっとう)では、産後は気血を補うべしとあり、体質を問わず、川芎と当帰を組み合わせた芎帰湯(きゅうきとう)を一日だけ飲んで、その後で芎帰調血飲を飲むことを薦めています。芎帰調血飲は今も産後によく使われており、貧血、神経症、乳汁不足など産後の予防や治療に役立つ薬。錠剤にもなっているので手軽に利用できます。