体は疲れているのに眠れません

 以前は布団に入るとすぐに眠れたのに、最近はなかなか眠れなくなりました。体は疲れているのに眠れないのです。不眠症に効く漢方薬はありますか。
(53歳・女性)

 早いものでもう6月。梅雨のじめじめした空気のせいで、余計に眠りが浅い人もいるのではないでしょうか。
 6、7年間も不眠が続き、めまいや動悸(どうき)もあるという40代の男性が、寿元堂に相談に来られたことがあります。漢方を試したいということで、柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)の顆粒剤を服用し始めたその男性。10日目くらいから少し眠れるようになり、約2カ月後には自覚症状が消えてよく眠れるようになったそうです。
 これは一例であって、実際には1、2日で効く人もいれば、もっと長い期間が必要な人もいます。
 昔の人も不眠には悩んでいたようで、不眠に効果があるとして多くの漢方薬が古典に紹介されています。その数は、私が知る限りでもなんと80種類以上。今回は、今でも使われる薬を中心に、代表的な薬を紹介しましょう。

酸棗仁湯(さんそうにんとう)  中国の後漢時代の張仲景(ちょうちゅうけい)が書いた本「金匱要略(きんきようりゃく)」に記載されている古典的な処方。〝漢方の睡眠薬〟と言われることもあるほど、不眠症によく使われる薬です。相談者のように疲れているのに眠れないタイプの不眠や、平素から疲れやすい虚弱な体質の人の不眠症に使われます。タイミングがよければ、西洋医学の睡眠剤と同じようにすぐに眠れることも。不眠症の人に使う一方で、嗜眠(だみん)をむさぼるような正反対の症状に用いることもあります。
柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう) 体力のある人で便秘傾向があり、胸や腹のあたりで動悸を打つような人の不眠症に
温胆湯(うんたんとう)  眠れてもいやな夢を見て十分な睡眠がとれないような人に

 西洋医学の睡眠薬は飲んですぐに眠れる即効性がありますが、ずっと続けて飲まなければいけません。一方、漢方薬には西洋薬に匹敵する作用を持つ薬はありませんが、睡眠のサイクルを調節して正常に戻すので、いずれ薬を飲まなくても自然に眠れるようになっていきます。漢方薬だけでは眠れないという場合、西洋医学の薬と併用しながら、様子を見るのもよいでしょう。
 また、布団に入る直前までテレビを見ていたり、パソコンや携帯電話を使っていたりすると、目や耳からの刺激で脳の働きは活発なままです。布団に入る前は静かに過ごす、朝は窓からの光を浴びるなど、日常生活にも気を付けてください。