ストレスが重なり、胃潰瘍に

 仕事のストレスや過労が重なり、胃がキリキリと痛むので病院に行ったら、初期の胃潰瘍(かいよう)と言われました。今のところ、手術の必要まではないと言われていますが、身内に胃潰瘍を繰り返している者がいて、不安です。
(38歳・男性)
 食べ物を溶かす胃酸は、自分の胃の粘膜をも溶かしてしまうほどの強力な酸です。正常であれば、胃の粘膜は粘液を分泌して胃酸から自身を守っているのですが、何かの原因で胃酸と粘液の均衡が崩れると、粘膜がただれ、穴が開き、やがては胃壁が破れてしまいます。
 この、何らかの原因とは、ストレスやアルコール、暴飲暴食、ピロリ菌などが挙げられます。
 また、胃潰瘍と同じ消化性潰瘍の病気に、十二指腸潰瘍があります。胃潰瘍は食後に痛み、十二指腸潰瘍は空腹時に痛むことが多い│など、特徴がありますが、漢方では、特別に区別することなく処方します。
 まず治療の基本は食養生です。
 私の恩師である、東洋医学会名誉会員の柴田良治博士は「動物食、砂糖、果物を多食すると、アレルギー疾患、神経痛、その他の成人病になりやすく、胃酸の酸度を高くし、さらに精神的ストレスにも弱くなると思われる」と指摘しています。
 玄米・菜食を行い、砂糖、果物を控え、よくかんで、腹八分となる規則正しい食事をしましょう。これは、西洋医学の治療でも同じです。
 漢方では消化性潰瘍に効果的な処方がいろいろとありますが、江戸時代の医学書「古今方書」には香砂平胃酸(こうしゃへいいさん)という処方が紹介されています。
 この処方の原典は中国明代の医学書「万病回春(まんびょうかいしゅん)」で、ここには、「治傷食凡飲食自倍者脾胃乃傷也(飲食の不摂生で体の傷んだ状態を治す。凡そ飲食が自ら倍する者は、胃腸機能が傷んだものである)」とあり、香附子(こうぶし)・陳皮(ちんぴ)・蒼朮(そうじゅつ)・枳実(きじつ)・カッ香(かっこう)・縮砂(しゅくしゃ)・木香(もっこう)・甘草(かんぞう)・生姜(しょうが)の9つの生薬から成ります。
 そして、肉食不化加山査、草果(肉食が不消化ならば山査子と草菓を加える)、米粉麪食不化加神麹、麦芽(米粉・麺食が不消化ならば神麴・麦芽を加える)、生冷瓜果実不化加乾姜、青皮(生ものや冷たいものや瓜類が不消化ならば、乾姜・青皮を加える)などの指示があります。
 このように科学的知識のない時代から、経験によって漢方処方は工夫されてきました。その観察力の鋭さは、驚くべきものです。
 現在は、胃潰瘍の漢方薬として、安中散(あんちゅうさん)、半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)などがよく使われます。