耳鳴りで悩んでいます

 かねてから難聴気味だったのですが、先月から耳鳴りがし始めました。耳鼻科へも通いましたが、いまだ治りません。現在、人工透析中です。
(75歳・女性)
 私の薬局を訪れる方も、耳の病気で悩んでいる方が少なくありません。その中で、最も多い相談が耳鳴りです。
 西洋医学が発達した現代でも、耳鳴りについては、その原因がはっきり分からなかったり、治療法が確立されていなかったりします。病院に行っても原因が分からないと言われて漢方に頼る人が多いようです。
 江戸時代の浅井貞庵(あさいていあん)先生の書物「方彙口訣(ほういくけつ)」には「耳鳴りには大鼓の音やセミの声の如きもの、音楽合奏をするように鳴り続くものなどがある」とあります。
 また、同じく江戸時代の有持桂里(ありもちけいり)先生の書物「方輿輗(ほうよげい)」では、耳の病気は耳鳴りと難聴の二つが主な症状だとして重んじられ、耳の腫れや耳からの出血、耳がかゆいなどは症状の一部分として考えています。
 そして、「耳鳴りは難聴のもとである」「耳鳴りがしているうちに、だんだん耳が遠くなっていくものだ」「難聴になるものは必ず先に耳鳴りがする」などと書かれており、「耳鳴りのときに早く手当てをしておけば、難聴にはならないで治るものだ」としています。今回の相談者も難聴気味だったとのことですが、耳鳴りと難聴は一緒に起こることが多いので「方輿輗」でも前述のような表現がされているのでしょう。
 このように、さまざまな古典に記載されている文章を読んでいると、昔から耳鳴りで悩んでいた人が多かったことが分かります。
 耳鳴りの原因としては、大きく分けて①五臓の一つ「腎」の働きの低下②水分代謝異常③精神的ストレス?の3種類が考えられます。特に漢方では「腎は耳に開竅(きょう)する」という言葉があり、腎の衰えは耳にも現れるとして、耳と腎の機能が深く関連していると考えています。漢方で意味する腎には、腎臓の機能も含まれます。相談者の場合、人工透析中ということですので、腎の機能低下が関係しているのかもしれません。
 このようなケースに適する漢方薬として、腎機能を強化する六味丸(ろくみがん)が挙げられます。この薬は、セミの鳴くような耳鳴り音がするものによいとされていて、高齢や病後で弱った状態の人の耳鳴りによく使われます。また、もっと弱った状態の人には八味地黄丸(はちみじおうがん)を使うこともあります。いずれにしても相談者がどのような体質なのかがとても大切です。専門家によく相談しましょう。