夏ばてに効く漢方薬は?

 毎年夏になると、食欲が落ち、下痢をしがちで、疲れやすい傾向があります。足がだるくて、階段を昇り降りするのもおっくうです。夏ばてに効果のある漢方薬があれば教えてください。
(43歳・女性)
 今年の夏は本当に暑いですね。「酷暑」という言葉の意味を実感する日々です。
 夏は、食欲がなくなり、消化機能が低下し、睡眠時間も短くなり、体の活動力がダウンする時期。梅雨のころから症状を感じる人もいますが、夏の終わりから秋にかけて疲労を訴える人も多いようです。相談者のように、足がだるい、疲れる、便が緩くなるなどは、典型的な夏ばての症状です。
 今回は、夏ばてに使う、最も有名な漢方薬である清暑益気湯(せいしょえっきとう)にスポットをあてて解説します。これは、夏の体のだるさ、口渇(こうかつ)、下痢、手足の倦怠(けんたい)感、食欲不振など、夏の疲れの解消を目標に使う薬です。
 実は、一口に清暑益気湯といっても、昔はいくつかの種類がありました。
 最初に考案したのは、中国の金時代の李東垣(りとうえん)です。李東垣は、上手に体を補って元気をつける〝養生の原則〟を唱えて大きな実績を上げ、金元時代の四大医家の一人として知られています。
 李東垣が書いた「内外傷弁惑論(ないがいしょうべんわくろん)」や「脾胃論(ひいろん)」に載っている清暑益気湯は、黄耆(おうぎ)、蒼朮(そうじゅつ)、升麻(しょうま)、人参、白朮(びゃくじゅつ)、陳皮(ちんぴ)、神麹(しんぎく)、沢瀉(たくしゃ)、甘草(かんぞう)、黄柏(おうばく)、当帰(とうき)、麦門冬(ばくもんどう)、青皮(せいひ)、葛根(かっこん)、五味子(ごみし)など、15種類もの生薬を組み合わせたものです。
 時代が下り、明の時代の「医学六要(いがくりくよう)」では、李東垣の処方から6種類の生薬を省いて9種類の生薬を組み合わせた清暑益気湯が考案されています。現在、使われているのは、この「医学六要」の処方ですが、江戸時代の「古今方彙(ここんほうい)」に「人に随(したが)って加減する」と書かれているように、漢方家が内容を加減しながら使うケースが多かったようです。
 清暑益気湯は優れもので、漢方に携わる人は、自分が疲れたときにも飲むという話をよく聞きます。人によって「数時間で効いた」という人もいれば、「数週間飲み続け、ある日ガラッと体調が良くなった」という人もいて、期間には差がありますが、疲労や夏ばてには抜群の効果を見せる薬です。
 夏ばてを感じている方はもちろん、虚弱なタイプの疲れやすい人にも効果があるので、専門家に相談の上、試してみるとよいでしょう。