抗うつ剤を漢方薬に切り替えたい

 パニック障害があり、心療内科の抗うつ剤を毎日飲んでいます。ところが先日、妊娠していることが分かり、不安を感じています。漢方薬に変えることはできるでしょうか。
(30歳・女性)
 結論からいえば「妊娠する前に相談に来てくれればよかったのに…」というのが本音です。心の病気の治療に限りませんが、私はファインプレーを狙わず、確実なプレーを基本にしたいと思っています。そうすれば結果的にファインプレーも起きやすくなります。
 どんな病気でも、西洋医学の薬を漢方薬にパッと切り替えてうまくいくケースばかりではありません。ですから、このケースでも、すぐに抗うつ剤をやめるのではなく、心療内科に通い続けて抗うつ剤を飲みながら、漢方薬を併用することから始めるとよいのです。そのうち徐々に抗うつ剤が減っていけばよいでしょう。ただし、併用からスタートして完全に西洋薬が不要になるまでの期間は一定ではなく、時間がかかる人もいれば、漢方薬の方が気持ちよく効くという人もいます。
 妊娠の可能性のある場合や、妊娠中に西洋薬を避けたい場合は、できるだけ妊娠前に漢方薬を試してみてほしいと思います。相談者のようにすでに妊娠したという場合、一般的に胎児に影響が大きいといわれる12週まで「なんとか漢方薬で乗り切ってみよう」と試してみるのも一案です。ただし、心の病気は命にかかわることもあり、リスクも高いため、心療内科の医師とよく相談してから決めてください。
 「パニック障害」は、強い不安とともに、突然激しい動悸(どうき)や息苦しさなど発作に襲われる病気です。漢方には、「パニック障害」という西洋医学の病名はありませんが、古典を開くと、さまざまな精神症状が載っています。西洋医学の病名にかかわらず、体質と症状に合った漢方薬を使えばよいのです。漢方薬を2つ紹介しましょう。
柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)体力のある「実証」の人向き。便秘傾向があり、胸苦しさを感じる人。動悸を打ち、驚きやすい人、不眠の人に。人と会うのを避けたがるような人にも。
柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)柴胡加竜骨牡蛎湯と同じような症状の人で、あまり体力がない「虚証」の人に。
 昨年、20年以上も抗うつ剤を飲んでいるという60代の男性が相談に来られました。幸い、その男性は漢方薬を8カ月程度飲んで症状がかなり改善され、冗談も言えるようになってきました。誰でもがそうなるわけではありませんが、このようなケースには私自身も勇気づけられる思いです。