腰痛にも漢方薬は効きますか

 腰痛がひどくなり、病院を受診したところ、腰部脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)と言われました。漢方薬も効果があるのでしょうか。
(61歳・女性)

 「腰部脊柱管狭窄症」とは、腰部の脊柱管が狭くなり、脊柱管の中を走っている神経が刺激されたり圧迫されたりして、坐骨(ざこつ)神経痛になる病気です。50~60歳代や70歳代以上の方たちに多く見られます。
 冷えると症状がひどくなることが多く、寒い季節が到来すると当薬局にも、「病院でこの病名を告げられた」とやって来られる方が少なくありません。症状を聞いて「坐骨神経痛ですね」と私が言っても、「いえ、脊柱管狭窄症です」とおっしゃる方もいます。「神経痛」の響きは、まだ内科的に治るような気がする一方で、「脊柱管狭窄症」の響きは外科的処置でないと治らないように思い込む方が多いようです。こうなると病名に振り回されていると言わざるを得ません。
 漢方に神経痛という病名はありません。しかし、古典には今でいう神経痛と同じ症状を細かく観察した記述が見られ、昔の人たちがさまざまな薬を使い分けてきたことが分かります。では、どんな漢方薬を使うのかいくつか紹介しましょう。

 疎経活血湯(そけいかっけつとう) 中国の明の時代の書「万病回春」には、「体に痛みが走って昼より夜に痛みを強く感じるときは、疎経活血湯がよい」「酒を飲む人に多く、冷えによってひどくなる」と書かれています。このように夜間に痛みがひどくなる神経痛は、異常のある場所に生じた瘀血(おけつ)が原因になることが多く、疎経活血湯がよく使われるのです
 桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう) 江戸時代に古方の大家である吉益東洞(よしますとうどう)先生が考えた薬。体があまり丈夫ではない虚証(きょしょう)の人向けの「桂枝湯(けいしとう)」という薬があります。これに利水効果のある「蒼朮(そうじゅつ)」と、体を温める「附子(ぶし)」を加
えたものです。冷え症で尿が出にくい虚弱な人や、水毒の強い人に向いています
 独活寄生湯(どっかつきせいとう) 寒がり、冷え症の人に向いている処方。当帰(とうき)、川芎(せんきゅう)、細辛(さいしん)、秦 (じんぎょう)、人参などの生薬が血行を促進する働きがあります

 私自身、駆け出しのころは、脊柱管の異常が原因とされる症状に漢方薬が効くはずはないと思っていましたが、経験を積むうち、それらにも漢方薬がよく奏効することを実感するようになりました。試してみる価値は十分にあると思います。