夏に甘酒を飲んでいた理由

 寒い季節に飲むイメージのある甘酒ですが、実は俳句でいうと、夏の季語。漢方薬が医学の中心だった江戸時代には、夏に飲むものとして人々に親しまれていました。
 当時は夏の暑さで体調を崩す人や命を落としてしまう人が多く、1年でも夏の死亡率が最も高かったといいます。そのため人々は、夏を乗り切るために、さまざまな工夫を凝らしてきました。その一つが甘酒です。
 江戸時代の風俗を紹介した書物「守貞漫稿(もりさだまんこう)」によると「夏になると甘酒売りが市中に出てくる」とあり、価格は一杯六~八文だったそうです。甘酒釜を箱に入れて担ぎ「あまざけ~、あまざけ~」と売り歩く甘酒売りの姿は、夏の風物詩だったことが分かります。
 甘酒には、ブドウ糖、必須アミノ酸に加え、必須ビタミンといった栄養素が豊富に含まれています。その成分が現在の点滴に近く、麹の力で体に吸収されやすい状態に分解されているので、現代でも「飲む点滴」と呼ばれるほど。
 しかし、江戸時代の人々が成分内容を知るはずもありません。甘酒が夏バテ予防になることを経験的に知っていた昔の人々の知恵には本当に舌を巻きます。
 漢方の古典にも、夏の過ごし方や夏の疲れに効果的な漢方薬が多数掲載されています。
 今年のように猛暑続きの夏は、体に疲れがたまっている方が多いはず。甘酒を飲んだり、体力回復作用のある漢方薬で乗り切ってはいかがでしょうか。