病名にとらわれてはいけない!

 漢方薬はその人に適した薬を選ぶことで、本来の効果が得られます。適する漢方薬を選ぶ時には、相手の症状、体質、見た目などいろいろなことが手掛かりになります。得られた手掛かりから、その症状を改善するために適切な生薬(しょうやく)が組み合わさった漢方薬を選びます。
 例えば、女神散(にょしんさん)は、イライラやのぼせなどの症状の改善を目標に、女性の更年期症状などによく用いられる漢方薬です。
 元々は安栄湯(あんえいとう)と呼ばれていました。「勿誤薬宝方函口訣(ふつごやくほういくけつ)」という古典には「この方(処方)は元、安栄湯と名づけて軍中七気を治する方なり」と書かれています。江戸時代に、精神的にも肉体的にも過酷な状況下で戦う兵士たちの神経症(戦争ノイローゼなど)を治すのにも用いられていたのです。
 そして、女性特有の症状にもよく効くことから、漢方界最後の名医といわれる浅田宗伯によって、「女神散」と命名されました。女神散という名前から女性向けの漢方薬と思われがちですが、症状さえ適すれば男女を問わず使用するのです。 
 このように、漢方の世界で重要なのは、むやみに病名にとらわれないことです。最近はインターネットなどで簡単にさまざまな情報が手に入る時代ですが、病名だけを目安に漢方薬を選んでいる情報も少なくありません。専門家に相談して、適した漢方薬を試しましょう。