漢方薬の選び方

 漢方専門薬局では「私の病気には何という漢方薬が効きますか」と尋ねられることがあります。尋ねる方に悪意はないのですが、こちらは内心「誤解しないで!」と言いたくなります。漢方薬の選び方は、そんなに単純ではありません。
 漢方では、その人の体質や症状を総合的にとらえた結果を「証」と呼びます。その人に現れている細かい症状を含めた全身状態を、「陰陽」「虚実」「気血水」などの考え方と照らし合わせて証を判断します。
 そして、証に適した漢方薬を選ぶことでよい効果が期待できるのです。 しかし、証の判断は長年経験を積んだ漢方家でもそうそう容易なものではありません。
 昭和を代表する偉大な漢方医の一人、森田幸門先生でさえも、証を判断するときには「漢方家の創造的構想力、すなわち第六感による場合が多い」と述べられています。
 第六感を磨くためには、知識を習得する努力はもちろんのこと、何とか漢方薬を効かせたいと願う気持ちに基づいた経験の積み重ねが大切だと私は感じています。
 使ってみて効果が出れば、その漢方薬が間違っていなかったということになり、効果が出なければ、次の漢方薬を試すことになります。
 いくらご託を並べても効果が出なければ意味がありません。理屈よりも結果が大切なのです。
 この当たり前のことが忘れられていることが多いような気がします。