効能を指し示す生薬

 女性に使われる漢方薬に、よく含まれる生薬(しょうやく)の一つに「当帰(とうき)」があります。セリ科シシウド属の植物で、根の部分を使います。
 当帰は古くから使われてきました。漢方の古里、中国の最古の薬物書である「神農本草経(しんのうほんぞうきょう)」に記載があり、体力を養う滋養強壮の作用をもち、病気を予防するとされています。しかし、中国産の当帰は「カラトウキ」といわれ、日本で栽培されている当帰とは種類が違うものです。
 日本の伝統医学である漢方の世界では、国産の当帰が使われます。中でも、奈良県で栽培される〝大和当帰〟は品質が良く、本当帰ともいわれます。寿元堂薬局で扱っている大和当帰も香りが高く、甘くておいしいです。
 しかし、大和当帰は収穫量が少なく高価であるため、現在流通しているのは、昭和になって北海道で作られた〝北海当帰〟が一般的です。
 さて、昔の中国に冷え症の若妻がおり、何年も赤ちゃんができないので実家に帰らされてしまいました。心配した母親がある薬草を飲ませ続けたところ、冷え症が改善し、若妻が夫のもとに帰り、家族をつくって幸せに暮らしたそうです。ある薬草とは当帰のこと。「当帰夫」(まさに夫に帰るべし)となった出来事にちなみ、当帰と呼ばれるようになったそうです。
 効能を指し示す漢方薬の名前があるように、生薬の名前から効能を想像しても面白いかもしれません。