新生児に飲ませる漢方薬

 今ではあまり知られていませんが、漢方には新生児に飲ませる「マクリ」という薬があります。飲ませた赤ちゃんは疳(かん)が抑えられ元気に育つとされ、江戸時代にはよく使われていました。
 目的は、赤ちゃんの体内にたまった胎毒(たいどく)の排出。胎毒とは赤ちゃんがおなかの中にいる間にためてきたものや、出産時に飲み込んだ瘀血(おけつ)のこと。胎毒を〝まくり出す〟ということからマクリと名付けられたそうです。
 江戸時代の漢方医・原南陽の著書には、生まれて最初にする胎便と一緒に胎毒を排出するのが非常に重要で、胎毒が残ると後々影響があることや、産後母乳を飲ませる前にできるだけ早く飲ませるのがよいことが書かれています。また、有持桂里の書には「胎毒を効果的に出し切るための薬なので、飲ませるのは初日~2、3日」「薬を1合の水に入れて半分になるまで煮詰め、ハマグリの殻に入れて口に流す」という指示があります。
 現在では、虫下しとして知られる海人草(かいにんそう)のことをマクリと呼ぶこともありますが、本来はそれとは異なる漢方薬のこと。マクリとして使われた処方が数種類ある中で、希代の名医・浅田宗伯は、大黄(だいおう)・黄連(おうれん)・紅花(こうか)・甘草(かんぞう)からなる甘連湯(かんれんとう)を推奨しています。
 マクリを含め漢方薬の効果は科学的に証明されてはいませんが、広い範囲の病気に効果をあげているのは事実。赤ちゃんの健康のために江戸時代の習慣を見直すのもよいのではないでしょうか。