桜の樹の皮も生薬の一つ

 満開の桜が散った後、葉桜がきれいな時期です。日本の国花であり、昔からたくさんの人に愛されてきた桜。日本最古の和歌集である「万葉集」にも桜を詠んだ歌が残されています。
 桜のお花見の始まりは平安時代、貴族たちが宮中で桜の歌を詠みうたげを楽しんでいたそうです。鎌倉・室町時代に入ると武士の間にもお花見を楽しむ習慣が広まり、江戸時代には市民にまで広まったといわれています。そんな桜の樹の皮は、桜皮(おうひ)といい、漢方薬の原料である生薬(しょうやく)の一つです。
 桜皮は十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)という漢方薬に含まれています。この薬は、1804(文化元)年に世界で初めて全身麻酔下での乳がん手術を成功させたことで有名な外科医・華岡青洲(1760~1825年)によってつくられた処方です。
 十味敗毒湯は、中国の古い医学書『万病回春』に記載されている荊防(けいぼう)敗毒散という処方を基本として工夫されました。その名の通り、10種類の生薬で構成されています。
 化膿(かのう)傾向のある皮膚炎に広範囲に用いられるほか、アレルギー性のじんましんを起こしやすい人の体質改善薬として使われることが多い薬です。
 来年のお花見では、桜の花だけでなく樹の皮にも注目して〝漢方のかけら〟を感じてみるのも面白いかもしれません。